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歯を白くしたい方へのご提案 ~ホワイトニングだけではない選択肢と治療プラン~
- 2025年9月17日
- コラム
「歯を白くしたい」とおっしゃる患者さんはとても多くいらっしゃいます。日常診療のなかでも、見た目を改善したいという希望の第一歩として“白さ”が挙がることは珍しくありません。しかし、ここで重要になるのは「白くしたい」という言葉が患者さんごとに少しずつ意味合いが違っている、という点です。
ある方は「コーヒーや紅茶でついた着色を落として、もともとの自分の歯の白さを取り戻したい」と思っているかもしれませんし、別の方は「芸能人のように明るく輝く白さを手に入れたい」と考えているかもしれません。また、歯の色そのものというより「歯並びや形も含めて、笑ったときに清潔感がある口元になりたい」と考える方もいます。
つまり、“歯を白くする=ホワイトニング”ではなく、患者さんが求める白さのレベルや目的に応じて、適切な治療方法は大きく変わってくるのです。ここでは、歯科医師の立場から、それぞれのケースでどのようなメニューが考えられるのかを詳しくご説明します。
1.まず「白さの意味」を確認することが大切
診療室で「白くしたい」と伺ったとき、まず最初に行うのは「患者さんにとっての白さの基準」を明確にすることです。
- 自然な範囲で清潔感のある歯にしたい
- 人から見て“白い”とわかるくらいの明るさが欲しい
- 写真やステージ映えするようなはっきりした白さが欲しい
- 変色や欠けた部分も含めて、全体的に美しい歯並びを整えたい
このように、白さを求める背景にはさまざまな理由があります。ここを曖昧にしたままホワイトニングを行っても、想像していた仕上がりと違い「思ったほど白くならなかった」という不満につながることもあります。そのためカウンセリングでしっかりと希望を伺い、治療ゴールを共有することが成功の第一歩です。
当院では、一つの基準としてシェードガイドという歯の色を目に見える形で見て頂き、どの白さを希望されているかを伺います。
2.クリーニングで実現できる“本来の白さ”
「白くしたい」とおっしゃる方の中には、歯そのものが変色しているわけではなく、表面にステインや歯石が付着しているケースも多く見られます。
- コーヒー・紅茶・赤ワインによる着色
- 喫煙によるヤニの沈着
- プラークや歯石の黄ばみ
これらは、歯科医院でのプロフェッショナルクリーニング(PMTC)やエアフローという機械でのパウダークリーニングによって改善できます(保険適応外になります)。歯の表面をきれいに磨き、汚れを取り除くことで、もともと持っていた自然な歯の白さを取り戻せるのです。
クリーニングのメリットは、歯を削らず薬剤もほとんど使わないため、歯や歯茎に負担が少ない点です。さらに口腔内の着色の原因でもあるバイオフィルムを除去するので口腔内全体の健康状態が改善し、口臭予防にもつながります。
ただし、「自然な白さ以上」を求める場合、クリーニングだけでは理想に届かないこともあります。その場合は次にご紹介するホワイトニングを検討することになります。
3.ホワイトニングで得られる“透明感のある白さ”
ホワイトニングは、薬剤(過酸化水素や過酸化尿素)を用いて歯の内部の色素を分解する治療法です。加齢や生活習慣による黄ばみを改善し、歯そのものを一段明るい色調へと導きます。
主な種類
1.オフィスホワイトニング
- 歯科医院で専用の薬剤と光照射を使う方法
- 短期間で効果が出やすい
- イベント前に一気に白くしたい方におすすめ
2.ホームホワイトニング
- マウスピースを使って自宅で行う方法
- 効果は緩やかだが、色戻りが少なく持続性が高い
- 自分のペースで行えるメリットがある
3.デュアルホワイトニング
- オフィスとホームを併用する方法
- 即効性と持続性を兼ね備えている
- しっかり効果を出したい方に向いている
注意点
ただし、ホワイトニングにも限界があります。神経を失った歯の変色や、抗生物質(テトラサイクリン系)による強い変色は、回数を重ねないと効果が得られない場合や、ホワイトニングだけでは完全に改善できないこともあります。このような場合、次にご紹介する審美補綴治療が選択肢となります。
4.審美補綴で得られる“理想的な白さと形”
「ホワイトニングでは思い描く白さが得られない」「変色や形態不良も同時に治したい」という方には、審美補綴治療が有効です。シェードガイドで現在のご自身の歯の色よりもかなり白い色を希望される場合、強いご希望がある場合はご提案させて頂くことがあります。
主な方法
1.ラミネートベニア
- 歯の表面をわずかに削り、薄いセラミックを貼り付ける方法
- 色調だけでなく形も整えられる
- 比較的短期間で治療が完了する
2.オールセラミッククラウン
- 歯を全体的に覆う被せ物
- 神経を失った歯や大きな変色にも対応可能
- 強度と審美性を兼ね備えている
3.ジルコニアクラウン
- 高強度で審美性も高い
- 奥歯など力がかかる部位でも使用可能
これらの治療では、単に「白さ」を追求するだけでなく、歯並びやバランスも整えられるため、より総合的な審美性を高めることができます。
5.白さの希望によって変わる治療プラン
ここまでご紹介したように、「白くしたい」という希望をかなえるためには、患者さんの目指すゴールに応じた治療法を選ぶ必要があります。
- 自然な白さで十分 → クリーニング
- 一段明るい白さを求める → ホワイトニング
- より高い審美性・形態改善も希望 → 審美補綴
また、多くの場合はこれらを組み合わせて行います。たとえば「まずはクリーニングで着色を落とし、その後ホームホワイトニングでじっくり明るくしていく」という流れです。さらに、特定の歯だけ強い変色がある場合は、その部分だけをセラミックで修復し、全体はホワイトニングでトーンを整えるといったハイブリッドな治療計画も考えられます。
6.白さを長く維持するために
どの方法を選んでも、治療後のケアがとても大切です。ホワイトニング後は色戻りを防ぐために、着色しやすい飲食物(コーヒー・カレー・赤ワインなど)を控えたり、定期的にタッチアップを行ったりすることが推奨されます。審美補綴の場合も、定期検診で歯茎との境目の清掃や咬み合わせのチェックをすることで、より長く美しさを保つことができます。
まとめ
「歯を白くしたい」という希望は、単にホワイトニングを意味するわけではありません。患者さんの求める“白さの定義”を明確にすることが、最適な治療法を選択するうえで非常に重要です。
- 表面的な着色 → クリーニング
- 歯のトーンを明るくしたい → ホワイトニング
- 変色や形の改善もしたい → 審美補綴
表面的な着色除去は今流行りのサロンホワイトニングやセルフホワイトニングでも可能ですが、歯のトーン自体を白くしたいのであれば、国の薬事認可を受けている薬剤でないと難しいと思います。
歯科医師としては、患者さんが本当に望んでいるゴールを正しく理解し、無理のない範囲で最適なプランをご提案することが大切です。そのうえで「白さ=健康で美しい笑顔」につながることをお伝えし、一人ひとりに合わせた治療を進めていきます。
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